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アントニオ・ビバルディ (1678-1741)
ダリオの戴冠
Harmonia Mundi
France Musique d'abord 1901235.37 (3枚組)
1986年フランスのニースにて録音
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声の倒錯趣味?
あらすじ
ペルシアの王チロの死後、
ダリオ、アルパーゴ、オロンテの3者が王座をめぐって牽制しあっていた。争いと流血を避けるため、ダリオは、亡きチロ王の長女スタティラ姫と結ばれた者が
王座に着くことを提案する。3人の求婚者だけでなく彼女の教師ニセーノまでが、スタティラ姫に思いを寄せていることから、話はさらに複雑になる。加えてス
タティラ姫のずるがしこい妹、アルゲーネ姫は求婚者の1人ダリオに横恋慕している。さらにメディア国の王女であるアリンダ姫も、同じく求婚者の1人オロン
テに恋している。アルゲーネ姫はニセーノと組んで、スタティラ姫を森に置き去りにし獣の餌食にしようとするが、計略はダリオによって暴かれる。スタティラ
姫はダリオと結ばれ、2人の悪漢は厳しく罰される。
コメント
下の配役表を見れば分かるように、4人のいる女役の内3人までもが男性アルトによって演じられ、4人の男役の半数が女性ソプラノによって演じられることか
ら、複雑な三角関係の物語ははさらに複雑さの度合いを増す。加えてソプラノの1人、イザベル・プールナード*は一人二役で、女役と男役をそれぞれこなして
いる。これぞ声の倒錯趣味?
リスナーをさらに混乱させるためなのか、100ページを越える添付の台本には翻訳がなく、さわりの部分に英語、独語、仏語で概要が記されているのみであ
る。混乱せずに話に付いていくのは容易な技ではないが、オペラ自体にはすばらしい音楽と歌がふんだんにちりばめられている。アルモニア・ムンディのバーゲ
ンレーベルである Musique d'abord
シリーズの慎ましい値段を考慮すれば、お代に十分見合ったエンターティメントと言えよう。このCDは、1999年版のペンギンCDガイドで、星2.5個を
与えられている(最高評価は星3つ)。
女役 |
男役 |
スタティラ (チロ王の長女、純真な姫君)
ジェラール・レー
ヌ (カウンターテナー
アルゲーネ (彼女の妹)
アンリ・
ルドワ (カウンターテナー)
フローラ (女官、2人の姫君の腹心)
ドミニク・ビス
(カウンターテナー
アリンダ
(メディア国の王女、オロンテに恋している)
イザベル・プール
ナード*(ソプラノ)
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ダリオ(ペルシアの将来の王)
ジョン・
エルウィズ (テナー)
アルパーゴ
(ダリオのライバル、スタティラとの結婚を望む)
イザベル・プール
ナード*(ソプラノ)
オロンテ
(ダリオのライバル、スタティラとの結婚を望むペルシア貴族
アグネス・メロン
(ソプラノ)
ニセーノ (哲学者 、2人の姫君の教師)
ミシェル・バー
ショーブ (バリトン)
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Benedetto
Marcello (1686-1739)
Estro poetico armonico
Kikko Classic KC019CD
1998年イタリアのミラノにて録音
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性別役割の交替
ソロイスト
クレア・
ブリュア(コントラルト)、パオラ・フランコ(コントラルト)、シモーヌ・バルトリーニ(ソプラニスタ)www.simonebartolini.it
背景
マルチェロの本業は弁護士で、音楽家ではなかった。
彼はベニスにおいて音楽に優れた才能を発揮した貴族集団の一員である。Estro poetico armonico
は、彼の最も重要な作品と考えられている。音楽で生計を立てていたわけではないマルチェロは、誰の気に入ってもらう必用もなかったから、音楽に対して非常
に進歩的な取り組みができた。ここに集められた
50編の詩編は、オラトリオでも、カンタータでも、典礼の音楽でもない。これらは詩編のテキストをもとにしているが、時にはそれから外れることもあるかな
り自由な言い換え(パラフレーズ)である。これらはマルチェロの友人であるベニスの貴族、ジュスティニアーニによってラテン語でなく、一般の人々がより近
づきやすいイタリア語を使って書かれた。本物の古代世界の音楽を復興させたかったマルチェロは、古いユダヤの旋律をこの作品に用いた。彼は「純粋な音楽」
のために、装飾音の使用を一切許さなかった。
コメント
マルチェロの音楽それ自体が持つ独自性を別にして、このCD
でさらにユニークなのは、より高い声域が男性(ソプラニスタ)によって歌われる一方、より低い声域が女性(コントラルト)によって歌われることである。マ
ルチェロが果たして男女の役割交替を念頭に置いてこの曲を書いたのかどうかという疑問は残るが、この非常に興味深い性別役割の交替は、Salmo III: O Dio perche cotanto e mai
cresciuto で聴くことができる。
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