初心者のための古楽鑑賞
古楽アンサンブル配列
近代オーケストラ配列
古楽 vs. 室内楽オーケストラ
古楽 vs. 近代オーケストラ
オーケストラ聴き比べ
古楽器とモダン楽器
オーケストラ配列

古楽アンサンブル*
弦楽器:
左に第一バイオリン4人+右に第二バイオリン4人
ビオラ2人、 チェロ2人、バス2人
木管:
フルート2人、オーボエ2人、バスーン2人
金管:
ホルン2人、トランペット2人
ティンパニ

指揮者はハープシコード奏者または主席バイオリン奏者を兼ねる
演奏者数:15から30人


近代オーケストラ*
弦楽器:
第一バイオリン20人+第二バイオリン20人は全て指揮者の左手
ビオラ2人、チェロ2人、ダブルバス2人
木管:
フルート2人、オーボエ2人、バスーン2人
金管:
ホルン2人、トランペット2人
ティンパニ

専任指揮者は演台上
演奏者数:60人以上

これらはあくまでも典型的なオーケストラの配列であり、これ以外の並び方もあり得る。

古楽アンサンブル vs. 室内楽オーケストラ

古楽アンサンブルは、近代楽器あるいは古楽器から編成することができる。前者は「歴史的認識を持った」スタイルと称されることもあり、モダンバイオリン上で、バロック運弓法や腸線(ガット)を用いることにより古楽器アンサンブルに驚くほど近い音が出せる。ドイツの Koelner Kammerorcheste およびカナダの Les Violons Du Roy などがこのカテゴリーに属する顕著なグループである。後者の徹底的な古楽器アンサンブルは、ここ20年ほどの間に非常にポピュラーになってきた。このカテゴリーのアンサンブルに先鞭を付けたのは、60年代はじめにドイツの作曲家パウル・ヒンデミットの理念に基づき、 コンセンタス・ムジク・ウィーンを設立したニコラウス・アーノンクールである。より新しいところでは、ターフェルムジーク、アカデミーー・オブ・エンシェント・ミュージック、オーケストラ・オブ・エイジ・オブ・エンライトメント、およびオーストラリアン・ブランデンブルグ・オーケストラなどが有名である。

小規模オーケストラにはこの他に、室内楽オーケストラと言われるものがある。モダン楽器をモダン技法で演奏するこれらのオーケストラは、バロック音楽を高度にロマン主義的に解釈する演奏様式と、バルブの付いたモダン金管楽器の音色によって、古楽アンサンブルとは容易に区別できる。室内楽オーケストラのサイズは、古楽アンサンブルと近代オーケストラの中間に位置する。パイヤール室内管弦楽団、アカデミー・オブ・セントマーチン・イン・ザ・フィールド、オルフェウス室内管弦楽団などが代表的な室内楽オーケストラである。.

古楽アンサンブル vs. 近代オーケストラ
古楽アンサンブル

利点:
◎古楽器はバロック時代の作曲家が意図した音色に近い音を出せる。
◎パート毎に割り振られたプレーヤーがより少人数である小型のオーケストラ配置からは繊細で明瞭な音が得られる。

欠点:
×古楽器の演奏は難しいため、熟練していない演奏者が奏でると線の細い荒々しい音になる。
×パート毎の人数が少ないから、それぞれの演奏者にはソロイスト並みのレベルが要求される。

近代オーケストラ

利点:
◎バロック時代以降、楽器に付け加えられた様々な工夫のお陰で、モダン楽器は音がより大きく演奏が容易である。

欠点:
×モダン楽器の音色はバロック時代の作曲家が意図したものとは異なる。
× 例えば左右に配置されたバイオリン同士の対話効果など、作品のもつ特定の効果が、同じ側に配置された多人数のバイオリンでは失われる。
×個々の楽器の音色が集団の中に埋もれてしまいがちである。

オーケストラ聴き比べ
オーケストラ聴き比べ

百読は一聴にしかず。 ここで古楽器アンサンブルと、近代オーケストラを聞き比べてみよう。下のサンプルクリップは、アルカンジェロ・コレッリ(1653-1713)によるクリスマス・コンチェルト、第四楽章アレグロの最初の部分である。演奏速度の違いに加えて、近代ピッチ(A=440Hz)とバロックピッチ(A=415Hz)との違いにも注意して欲しい。

古楽器を使用した古楽アンサンブル
近代オーケストラ
古楽器 vs. モダン楽器

弦楽器
まず最初に、古楽器とモダン楽器の定義をはっきりさせておかなくてはならない。何とも信じられないような話であるが、往年の名器ストラディバリウスを越える弦楽器の作成には、今もって誰一人成功していない。 したがって近代オーケストラと言えども、世界的なレベルのオーケストラで使用される弦楽器はほとんど全て18世紀半ば以前に製造された時代物なのである。過去数百年間に変化した音楽のスタイルに合わせて、これらの楽器には様々な変更(あえてここでは改良とは言わない)が加えられてきた。現在のモダン楽器というのは、実は過ぎ去ったロマン様式の名残なのである。他方、古楽器は製造当時のまま変更されていない時代物でも良いし、あるいはその忠実な複製でも良い。
ヨー・ヨー・マとトン・コープマンの合作による似非?バロックアルバム、シンプリー・バロック(Sony Classical SK 60680)のライナーノートには、 モダンチェロとそのバロック時代の祖先との比較が興味深く述べられている。以下が過去数百間に、マの愛器ストラデバリウスに加えられた変更点である。

エンドピンの追加
チェロを支えるエンドピンは、音の一部を床に伝達して増幅する。バロックチェロは演奏者の足で支えられ、よりデリケートな音色を生じる。

より狭い棹幅
バロックチェロの棹幅はより広く、4本の弦がより離れている。

より低くそりの高い駒
バロックチェロでは弦の駒はより薄くて平らである。その結果、弦の高さがほとんど同じになる。これは2本以上の弦を同時に弾く重音には便利であるが、他方、間違った弦を弾いてしまう危険性も高くなる。 より厚い駒は、ミュートの役割も果たす。

腸弦(ガット)から金属弦への変遷
腸弦は、張力のより低いバロック弓(下記参照)を使用してバロック運弓法で奏でることにより、より繊細な音を出すことができる。.

弓と運弓法
モダン弓では、スティックのそりが内向きでなく外向きである。これによって近代運弓法に欠かせない非常に張力の高い弓が得られる。バロック弓はまっすぐであったり、あるいは狩猟に使う弓のように外向きにそっている。そこに張られた馬毛にかかる張力は比較的弱い。バロック運弓法では、奏者が親指を馬毛の下にはさんでその張力を加減する。1本の弦のみを弾くときは張力を高め、2本以上の弦を同時に弾く重音では、 張力を弱めて馬毛を楽器の弦に沿わせるようにする。

ナチュラルトランペット
バルブの付いたトランペットは1815年頃の発明であり、それ以前に作られたトランペットは全て奏管の長さが固定されたナチュラルトランペットである。バルブを持たないナチュラルトランペットで出せる音(すなわち倍音)には、 (1点ハ=中央ハ)がある。
この自然倍音以外の音を出すためには、オーバーブローの技術によって、基音の倍音を出す必用がある。 2番目の倍音は出すことができない。7番目の倍音は音階からひどくはずれる。11、13、および14番目も調子外れであるが、熟練奏者ならそれぞれFまたはFシャープ、およびAまたはGシャープに近い音にすることができる。バルブ付きモダントランペットは、この倍音の2から12番目を使用するが、音程は1オクターブ低い。バルブを押さえることで奏管が延長され、半音階(12音)が全て出せるようになる。しかしバルブを導入することで、音の純粋さは失われてしまう。このためバロック音楽ではバルブのないナチュラルトランペットの使用が好ましい。
お問い合わせはこちらまで:
http://oakweb.ca/harmony/baroque/period-j.html