神話と伝説

セイレーン

その歌の美しさで船乗りを誘惑して難破させたという、ギリシア神話の半鳥半女の生物。ホーマーによれば、アイアイエーとスキラの岩の間にある西海の孤島に2人のセイレーンがいたという。後にその数は3人に増やされ、ナポリに近いイタリアの西岸にいるとされた。彼女たちは海神ポルキュスの娘、または河神アケローオスの娘、などと様々に言われる。.

ギリシアの英雄オデュッセウスは、魔女キルケーの助言をうけて、船員たちの耳をロウで塞いでセイレーンの歌が聞こえないようにし、彼女たちの歌の危険を退けた。それでもなお彼には音楽が聞こえたので、航路を外さないようマストに自分の身体を縛り付けさせた。別の伝説では、アルゴー号の乗組員らがその近くまで航海した際、オルフェウスが神々しく歌ったので、誰もセイレーンには耳を貸さなかったという。さらに後世の伝説では、これらのいずれかの失敗の後に、セイレーンは自殺を遂げたともいう。美術においては、彼女たちは初めは女性の頭を持つ鳥として、後には時として翼を持つ鳥脚の女性として表された。

セイレーンは、初期の探検の危険に係わる原始的な物語に、東洋の鳥人女のイメージが組合わさって発展したようである。人類学者は、東洋のイメージを霊魂鳥、すなわち生者を襲って自分たちの仲間にしてしまう羽を持つ幽霊と説明する。この観点からすれば、セイレーンはハーピーとの類似点がある。
Encyclopaedia Britannica 97

si.ren 名詞 [ME, fr. MF & L; MF sereine, fr. LL sirena, fr. L siren, fr. Gk seiren] (14世紀)1 しばしば大文字:その歌で水夫を難破に導いたというギリシア神話に出てくる女性たち、および部分的に人間である生物のいずれか。2 a:人を魅了させる甘美さで歌う女性。b: 妖婦。3 a:特に音響学の研究において、穴の開いた回転盤により空気、蒸気、または流体の流れを急速に中断して楽音を発生する装置(サイレン)。b:電動であることが多い鋭い警報音を発生させるため装置(サイレン)。4 [NL, fr. L]:サイレン属を形成する2種の北米のウナギ形両生類のどちらかで、小さな前肢を有するが後肢または骨盤がなく、永久外鰓並びに肺を有する。

si.ren 形容詞 (1568):セイレーンと似た:魅惑的な。

siren song 名詞 (1568):誘惑する言葉または魅力、特に魅惑的な、または人を誤らせるもの。
Merriam-Webster's Collegiate Dictionary 10th ed.

メルポメネー

ギリシア神話の9人のミューズの1人で、悲劇とリラ(古代ギリシアの竪琴)演奏の守護神。ギリシア芸術では彼女の象徴は、悲劇の仮面とヘラクレスの棍棒。言い伝えによれば半鳥半女性のセイレーンは、メルポメネーと河神アケローオスの結婚から生まれたと言う。
Encyclopaedia Britannica 97

ローレライ

ドイツのザンクトゴースハウゼン近くのライン川岸にある大岩。岩は反響を引き起こし、不誠実な恋人に絶望してライン川に身を投げ、漁師を難破させるセイレーンに変容したという美しい乙女の伝説との関わりがある。伝説の中心的要素は、ドイツの著作家クレメンス・ブレンターノが、小説 Godwi(1800-02)中で創作したとされる。ローレライは、数多くの文芸作品および歌曲の題材にされてきた。25人以上もの作曲家が、ハインリヒ・ハイネによるローレライの詞に曲をつけた。
Encyclopaedia Britannica 97

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背景イラスト提供 KIRA YUKO