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ドイツ語記事 英訳の校閲をして下さったアンドレアスさんに感謝いたします。
元記事はここです
Musik & Theater 1998年 10月 Stimmbezeichnung "Sopranist" Joerg Waschinski 

声楽パート「ソプラニスト」*
ヨーク・ワシンスキー

ヘンデルのセルセ。 夢のようにすばらしい役である。250 年前、それはカストラートによって歌われた。カストラートが絶滅してからは、女性が代わってその役を演じた。 しかし今や男性が、彼らのために書かれたこのソプラノ役を最善のやり方で再び征服する。 我々は 20 年前にカウンターテナーや男性アルトに慣れたように、「ソプラニスト」という声楽パートにも慣れることだろう。 その一人が若きベルリンっ子、ヨーク・ワシンスキーである。彼は昨春 St. Gallen の Stadttheater で、驚くべきたやすさ、熟達したきらめく敏捷さ、ふるえることのない純粋な音、華やかさを持った豊かな声、そして様々な感情に訴える表現でセルセを歌っ た。

つまるところソプラニストとは何者だろう。カウンターテナーや男性アルトとはどこが違うのだろうか。ワシンスキーは笑うだけだった。「その質問について は、ヨッヘン・コバルスキーが顔に青筋が立つほど力んで説明しています。基本的に僕としては、むしろ「カウンターテナー」は声域を示す一般的名称と言いた いです。最近、ますますたくさんのカウンターテナーがデビューしているので、声域をその他の声楽パートのように分類することが、有意義になってきていま す。「アルト」と「ソプラニスト」は、単に声の高さを表しているだけです。しかしこの分野での一様な用語はありません。多くのアルト歌手は、この名称をカ ウンターテナーと区別するものと理解しており、カウンターテナーが肉体を感じさせない歌い方をすると言う事実を示したがります。1) これは例えば、リリックテナー(抒情的で繊細な表現に適するやわらかな声質)とドラマティックテナー(豊かで力強く重々しい表現に適した太い声質)の対比 に相当するでしょう。」

ヨーク・ワシンスキー は、第二世代、もしかすると第三世代のカウンターテナーである。にもかかわらずバロック音楽で男性がアルトを歌うことは、どこでも自然なことだと思われて いるわけではなく、ましてや彼らが肉体的損傷なしに、バロックオペラで 主要なカストラート役を極めることなど論外である。もちろん我々は、バロック時代のカストラートの歌声がどんな風だったのか知る由もなく、Derek Llee Ragin の声が女性ソプラノとコンピュータによって合体された映画「ファリネリ」は、興味深い音の近似努力にしか過ぎない。2) しかし我々は今日、これらのパートがどのように歌われ、装飾音が付けられ、 フレージングされたかを知っている。そして我々は、男性がこのソプラニストの声域に到達することができることも知っている。このようにして訓練された声 は、女性ソプラノとは全く異なる響きを持ち、男性的な力強さと一体化された魅惑的な官能性がある。

St. Gallen にてセルセを演じるヨーク・ワシンスキー(写真: Ernst Schaer)

バロック音楽に男声アルトが帰属するのは今では常識となっ たが、ヨー ク・ワシンスキーは、彼のソプラノの声域のために、音楽界にあってさえも繰り返し端緒を開かなくてはならなかった 。「僕は1994年にベルリンのHanns Eisler 音楽学校の入学試験を受けました。評価は満点だったので入学が認められるはずでしたが、僕を指導する用意のある教師がいませんでした。途方もない懸念があ りました。もしそこで、後に僕の教師となったRenate Faltin が受け入れてくれなかったら、入学できないところでした。歌唱技術の観点から言えば、男性ソプラノの扱いはその他のあらゆる声域と何ら違いはありませ ん。」

ことによるとバーゼルの Schola Cantorum のような古楽を専門とする学校だったら、大手を広げて迎えてくれたのではないだろうか?「実際、それを考えたこともありませんでした。僕は既に28才で、 教会音楽家として活動していました。カストラートに付いて書かれた本から、ソプラノで歌うアイデアが生まれました。はじめは独りで高い声を試してみたとこ ろ、自分が非常に高い声が出せて、しかもそれがかなり良い音であることに気づきました。」

ヨーク・ワシンスキーはかなり普通のテナーの声を持ち、 興味深いことに高音部ではいくらかの困難さを感じるという。「僕の声は、声域の切り替えがうまくこなせないことから、既に裏声になる傾向がありました。裏 声にならずに音を保つのは非常な苦労でした。」 それならば男性がソプラノの声域を歌うためには、特別な肉体的素質が必要だろうか?「全ての歌手が健康な声で裏声で歌うことができ、そのことによる害は全 くありません。それがどのように響いて、それをどのように使いこなすか、というのはまた別の問題です。音の質と響きは、いくつかの外的特徴と解剖学的要因 に左右されると思います。」

ワシンスキーの最高音はc'''(C6)で、 調子の良い日にはd'''(D6)にまで達する。彼は他のソプラニストと比べて、非常に高く歌うことができる。「それこそが僕の穴場市場なんです!」とワ シンスキーは言う。 この穴場市場が、ヘンデルの「Alcina」のRuggeiro3) のようなあこがれの役、あるいはハッセのオペラ「Adriano in Siria」の題名役、あるいはすばらしくやりがいのある役セルセに導いたのでである。

ワシンスキーのキャリアは始まったばかりである。 彼は昨春にメルク(オーストリア)で主要なバロック・フェスティバルにに出演し、ザルツブルグでは初めて開催された聖霊降臨祭フェスティバルで、聴衆を ファリネリのアリアで魅了した。レコード会社も彼の声を発見しつつある。ヘンデルのドラマチック・カンタータ「Clori, Tirsi e Fileno」 (NCA)、トン・コープマンの指揮によるすばらしい ジョバンニ・ ボノンチーニ のソロ・カンタータ(Barocktage Melk と ORFによる制作)、そして Martin Haselboek の指揮によるレオポルド一世の興味深い宗教音楽のCD (cpo)で彼の声を聞くことができる。4)

性別役割のある演技は、ヨーク・ワシンスキーにとって非常に特別 な、ほとんど 扇情的と言っても良いアピールがある。「僕には、それと戯れることがとても楽しいのです。もちろん女性的な印象を与えたいとは思いませんが。」しかし、彼 がノーマを歌うとき、話はまた別である。5) 驚くかもしれませんが、とワシンスキーは笑った。彼は既に余興でカルメンを演じたことがある!
[Reinmar Wagner]
翻訳者ノート
1) バロックオペラとカストラートが廃れてからは、ファルセット唱法はイギリスの聖歌隊のみで受け継がれた。当然ながらここではカウンターテナーは、中性的か つ実体のない霊的な声であることが要求された。

2) 邦題「カストラート」。Drek Lee Ragin (アルト) と Ewa Mallas-Godlewska (ソプラノ) の二人が、声がよく似ているために選ばれた。興味深い音声の「モーフ」工程についてはSony Online のサイトを参照されたい。

) Georg Friedrich Haendel: Die Zauberinsel der Alcina (Deutsche Grammophon Junior 449 595-2)

4) これらのCDに関するさらに詳しい情報は、アンドレアスさんの「男性ソプラ ノページ」を参照されたい。

5) ベリー二の有名なオペラ。もちろんノーマは女性役。
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